洋書に限らない読書テクニック

本章の冒頭において、洋書を読むために必要な能力は、

1)語学力
2)読書テクニック

の二つであると述べました。語学力については既にご説明しましたので、ここでは、読書テクニックについてご説明しましょう。

洋書を読むために必要な読書テクニックには、次の二つの種類があります。

1)洋書に限らない(和書にも適用できる)読書テクニック
2)洋書特有の読書テクニック

ここでは、前者の「洋書に限らない(和書にも適用できる)読書テクニック」についてご説明します。後者の「洋書特有の読書テクニック」については、項を改めてご説明します。

まず第一に、これはよく言われることですが、本は最初から読まないということです。もちろん、長編小説のように最初から読まないと意味がないものについては最初から読む必要がありますが、それ以外のものについては、基本的に情報を摂取することが目的ですので、知りたい情報になるべく早く辿り着けたほうがよい訳です。そして、既に知っている情報については、復習をしようというのでもない限り読む必要はありません。つまり、全部読もうとは思わないということです。特に、洋書の場合には和書よりも読むのに時間がかかりますので、余計な部分をばっさりと切り落とすことは非常に重要な作業です。

そのためには、以下の手順を践む必要があります。

まず、その本が求めている知識を得る上で適切な本かどうかを知る必要があります。このために、本の表紙や裏表紙にある紹介文、著者の略歴と紹介、まえがきやあとがき、目次に目を通します。この時点で、その本が読むに値するかどうかの判断は大体つきます。そして、読むに値しないようだったら、読むのをやめます。せっかく買ったのに勿体ないと思われるかもしれませんが、読むに値しない本に貴重な時間を割くほうが余程勿体ないことです。

もし幸い読むに値する本だった場合には、目次や索引を活用して、この本のどこに求めている情報がありそうかの目星をつけて、そのあたりのページをめくって軽く読んでみます。見事求めている情報に辿り着ければ、それでステージクリアです。はずれの場合には、再び目次や索引を使って別のところを探してみます。あるいは、書いてあることがよく理解できない場合には、その節や章を通読してみます。

この作業で基本的に必要な情報は摂れますので、「これで十分」と感じられた場合は、とりあえずその書物に関する作業は完了です。逆に、この作業をした上で「どうやらこの本は通読する価値がありそうだ」と感じられた場合には、実際に通読してみます。実際に面白かったら、参考文献などもチェックして、そこからまた芋蔓式に読んでいきます。また、本当に良かった本については、一定の期間を置いて再読します。それでもまだ得られるところがあれば、また一定の期間を置いて再々読します。

以上は、いわば守・破・離の「離」にあたる読み方です。つまり、当該分野に関してかなりの知識を有している場合の読み方です。洋書を読む必要がある方々は、通常当該分野に関してかなりの知識を有しているでしょうから、上記のような読み方が最も効率的だということになります。人によって若干方法の違いはありますが、その道のプロは大体こういう読み方をしています。こういう読み方をすると、時間当たりに摂取できる情報量が飛躍的に増えるからです。

もちろん、当該分野に関してあまり知識のない人は、いわば「守」の段階にありますので、自分に合った入門書を選んでそれを通読する必要があります。知識がついてくるにつれて、だんだん上記のような読み方に移行していくようにしてください。

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